11月16日(日)は、「真鶴町 三ツ石海岸 海に親しむイベント 海のミュージアム『真鶴半島 お林ネイチャーウォーク』」を開催しました。
真鶴半島には「お林」と呼ばれる森林があります。江戸時代には小田原藩によってクロマツが植林され、明治時代になると皇室の御料林としてクスノキが植林されたのですが、それ以来、町民からも大切に保護されてきた「お林」には、現在では自然の植生であるスダジイなども多く見られ、大変豊かな自然を感じることができる真鶴町の魅力の一つです。
真鶴町立遠藤貝類博物館を出発して、お林や海岸沿いの遊歩道を歩きながら自然観察をしました。植物については、神奈川県立生命の星・地球博物館の大西学芸員に解説頂きました。
博物館からお林に入るまでにも見どころがたくさんで、博物館を出発するとすぐに、こんもりとしたお林からクロマツの樹冠がぴょこっと頭を出している様子が観察できました。これは日当たりのよい場所を好み、本来はお林のような木々の茂る森林に生えるはずのないクロマツが、日光を求めてどんどん高くなった結果で、お林の歴史が作り出した珍しい自然の風景です。
お林の手前でも、みどことがたくさん。 |
また、お林の遊歩道の入り口近くでも、ハナミョウガの黒い果実がたくさんついている様子や、シイタケのような香りを辿ってキノコを見つけたりしました。
ハナミョウガの実がたくさんなっていました。 |
シイタケのようないい香りのキノコ |
お林はその歴史から、樹齢数百年にもなる大木が立ち並び、見上げてみるとその大きさに圧倒されてしまいます。今回は、お林の中でも特に大きいとされているクロマツ、クスノキの太さを測定してみました。
最初に測定したのはお林遊歩道の入り口にある推定樹齢200~300年のクロマツで周囲4m40cm、直径1m40cmもありました。次に推定樹齢100~200年のクスノキを計測すると、なんと、周囲は6m70cm、直径が2m13cmでした。一見して巨木だということはわかりますが、こうして測定して数値が出ると、あまりの大きさにみなさんもビックリされていました。これらの木の切り株には、測定を手伝ってくれた小学生はもちろんのこと、クスノキでは大人もゆっくりと横になることができるほどです。
ちなみに、古いクロマツよりクスノキの方が大きいのは、クスノキの方が成長のスピードが速いからだそうです。
クロマツの太さと直径を測定。 |
スダジイの太さと直径を測定。小学生も一生懸命お手伝いしてくれました。 |
冬の初めのお林では、さまざまな植物が果実をつけていて、スダジイのどんぐりやキチジョウソウや、アオキやカラスウリ、マムシグサなど赤やオレンジの鮮やかな実を観察することができました。
お林ではスダジイのドングリを見つけることができます。ぼうしの部分が特徴的です。 |
鳥の声を聞いたり、モグラ塚を見つけながら、お林西側のスダジイ群落を抜けて斜面を下って行くと、番場浦海岸へ出ました。海が近くなり、潮の影響が大きくなると少しずつ海岸植物が増え、植生が遷移していく様子が観察できます。
お林の西側はスダジイとアオキが優占しています。 |
番場浦海岸でお昼をとったあとは、海岸植物を観察しながら三ツ石海岸へ向かいました。
番場浦海岸でお昼ごはん!ぽかぽか陽気であったか。 |
秋や冬に海を訪れる人は少ないかもしれませんが、三ツ石海岸では色とりどりの海岸植物の花が咲いたり果実をつけたりしていて、観察するにはよい季節です。当日はイソギクやツワブキの黄色の花、テリハノイバラやトベラの赤い実などが見られました。また、アオサギが羽を休めている様子も観察できました。秋の海岸も自然の魅力がいっぱいで、みなさんにも楽しんでいただくことができました。
イソギクが見頃でした。 |
岩の上で休むアオサギ。 |
三ツ石海岸を目指して。ゴールまであと少し。 |
最後は、大西学芸員とディスカバーブルーの渡部より、今回歩いて観察したものを振り返り、森林と海のつながりやお林の魅力をレクチャーを行いました。これだけの規模の森林と海の自然が分断されずに残されている場所は、首都圏から近い場所ではなかなかありません。これまでの歴史や経緯があって真鶴町の人々に大切にされてきたからこそ体験できる貴重な自然の魅力を、今後もより多くの方にお伝えしていければと思います。
※今回のイベントは、文科省 公民館を中心とした地域活性化支援事業プログラム「海の自然を活かした地域振興~海を学び、海を活かした場づくり」事業の一環として、真鶴町立遠藤貝類博物館と特定非営利活動法人ディスカバーブルーが企画・実施しました。