2020年12月13日(日)は、海のミュージアム「真鶴半島ネイチャーウォーク~お林&ジオ~」を開催しました。
真鶴半島は相模湾の西の端の小さな小さな半島ですが、半島を覆う照葉樹林「お林」とその周りを囲む番場浦海岸、三ツ石海岸などの海辺は、狭い範囲にも関わらず見どころいっぱいです。
今回は、真鶴半島の森と海辺の自然を体験しながら、それらがどうして魅力的なのか、その理由についても探りながら歩きました。
真鶴半島の照葉樹林は、神奈川県の天然記念物であり、また、神奈川県立自然公園にも指定されています。町の人々から「お林」と呼ばれていることからも分かる通り、地域の人々に親しまれる森です。江戸時代のはじめに幕府の命を受けて植林されたクロマツ、明治時代に天皇の御料林となって植林されたクスノキ、その後、昭和に町有化されると自然植生のスダジイが増えてきました。この3種類が現在のお林を構成する主な樹種で、お林の中を歩くと、これらの樹冠が私たちの頭のはるか高くに見えます。この天井の高い森の景観が見事なのは、お林ならではの特徴です。
森林ができはじめてから、長期間にわたって持続すると、樹高の高い木の林ができて安定した森になります。この状態を極相林といいますが、お林は、江戸時代から長い間大切にされてきたおかげで、現在、極相林の姿を見ることができています。
お林に入る前に、「山の神」にお参りしました。
「山の神」は、お林の中に突然現れる鳥居と小さな祠です。「山の神」というと全国的には山間部で林業や農業を営む人々の神様です。しかし、真鶴の山の神は海沿いにあり、古くから漁業者に大切にされています。真鶴半島のお林は「魚つき林」と呼ばれ、昔から漁師が大切にしてきた森です。今でこそ、プランクトンの生産には陸由来の栄養が必要だということが知られていますが、真鶴の漁師たちは、昔から魚がとれるのはお林のおかげだと考え、大切にしてきたことがよくわかる場所です。
また、真鶴町は漁業と並び、石材業が盛んな町で、町内のいたるところで採石が行われてきました。真鶴半島の先端部分も、この地で噴火した真鶴溶岩が固まってできた頑丈な新小松石の産地で、特に海岸部分は相当の石材が切り出されたと考えられています。
石材業に関するみどころもたくさんありますが、今回は石材を切り出すための「矢穴」のあとや、運び出した場所などを見学しました。
真鶴半島の魅力のひとつとして、森から海へつながる自然の中を歩いて体験できるというのもすばらしいところです。大木が並ぶお林から海へ向かうと、徐々に見られる植物も変わり、海岸では海岸植物が花を咲かせ、その先は海藻が生育する磯につながっていきます。磯では、海の生物たちも多く生息し、海岸の浜辺には貝やウニなどの生物の殻や欠片がたくさん打ち上がっています。小さなエリアながら、これらが連続して一度に見られるのは貴重です。
今回も三ツ石海岸では、それらを拾い集めて楽しむこともできました。
真鶴半島のたくさんの魅力は、真鶴半島が火山噴火でできた固い溶岩であることや、相模湾に突き出た地形が関係しています。しかし、それだけではなく、その後そこに植物や動物が生息し、人々が石材を利用し、木を植え、森を守り、漁業を行い、自然を活かし守りながら、上手に利用してきた歴史や人々の営みの積み重ねが、現在の魅力的な価値になっているのです。将来にわたって、この自然が魅力的であり続けられるかどうかは、今ここに暮らす私たちの行動にかかっています。自然や地域の魅力を楽しむ体験を、未来につなげることができたら素晴らしいと思います。
今回は最後に、ご参加のみなさんに真鶴半島のみどころをカードに書いていただきました。「お林mitemitegram」として、ケープ1階のお林ステーションにて掲示します!掲示完成しましたら、改めてお知らせします。お楽しみに!
次回の海のミュージアムは、2月にビーチコーミングを開催予定です。
新型コロナウィルス感染症予防として、スタッフの対応やイベントの進行方法・会場設営にも対策を講じつつ、みなさんに海の自然をお楽しみいただけるよう努めてまいります。
対策内容やイベントの詳細は、下記のページよりご確認いただけます。
プログラム内容決定しましたら、下記ページに掲載いたします。
ぜひ、ご覧ください。
http://www.discoverblue.org/eventlist.html
※今回のイベントは、真鶴町から委託受け、特定非営利活動法人ディスカバーブルーが真鶴町立遠藤貝類博物館 教育普及事業の一環として実施しました。